出費0円で売上を飛躍的に伸ばせる紹介営業のコツ

この記事の著者

工藤聡生 
銀行、国際会計事務所勤務を経て開業。資金調達、事業計画による業績向上を支援している。早稲田大学政経出身、公認会計士・税理士。

紹介営業とは、既存の顧客に新たなお客を紹介してもらう営業行為です。
紹介する人の信用を利用して新規顧客に入り込めるので、まったくの飛び込みよりも、成功確率はぐっと高くなります。
ただ、紹介する側からすると、紹介責任が発生するので、気持ちよく次から次に、新顧客を紹介してくれるお客は、そんなに多くはありません。
そもそも、紹介する側には、メリットがあまりありません。

この紹介営業の達人をわたしは知っています。
紹介営業だけで、会社を成長させ、その一部を数十億円で売却し、本体企業は、あと数年で株式公開する予定です。
紹介営業だけの技法で、多くの有名社長を含む、大きな人的ネットワークを作り上げ、とんでもない成功を収めた人です。
大柄で恰幅がよく、押し出しが立派な人でした。
彼の手法は、まずこちらが相手に、お客を紹介して、相手に喜んでもらい、次に、自分の方にお客を紹介してもらうという方法でした。
相互に、お客を融通しあうというやり方です。
介営業は、一方的にお客紹介をお願いするパターンが多いので、より積極的な紹介営業のパターンといえましょう。

彼は、20代のころから、この紹介営業がうまく、外資系損保会社でずっとナンバーワンで、2番目の営業マンとは、営業成績が常に一桁違っていたという、伝説の営業マンです。
30代で独立して、いくつかの会社を立ち上げました。
ただ、人と人と紹介してつなげて、彼に恩義を感じる人々のネットワークを拡大していくという手法は、決してめずらしい方法ではありません。
多くの人がチャレンジしています。
しかし、彼ほど成功した人は見たことはありません。
彼の人的ネットワークは、驚くほど、広大です。
彼が、10年ほど前に、ビップ専門のクリニックを立ち上げました。
公開企業の社長は、投資家の目があるので、病院にいるところを目撃されたくないというということに目を付けました。
徹底してプライバシーに配慮して、第三者に目撃されることなく受診できるクリニックを設立したのです。
彼のネットワークに属する有名な社長さんたちが数多く、会員になりました。
会員の錚々たる顔ぶれには、わたしもかなり驚きました。

紹介営業に頼っている会社は、多くありますが、紹介営業でここまで大成功している事例は、わたしは、ほとんどみたことがありません。
なぜ、こんなに彼の紹介営業がうまくいっているか不思議で仕方ありませんでした。
最終的には、紹介営業だけで、100億円以上の、富を実現したわけですから。
わたしは、彼の紹介営業には、通常の人にはわからない特殊なノウハウがあり、
そこから逸脱することを絶対に許さないひとなのだろう。
だから、成功しているのだろうと思っていました。
要するに、とてもなく、緻密な計算に基づいた紹介営業をやっているのだなと、当初は、思っていました。

ただ、長く付き合ううちに、少しずつわたしの認識が間違っていることに気づいてきました。
事業に失敗して再起不能となり、まず、将来の見返りは期待できないだろうという人たちを好んで、助けるのです。
あきらかに時間の無駄と思われるような方々です。
部下の営業マンの失敗は、注意しますが、大失敗をしても、怒りをぶつけるということは、まずありません。
誰かを首にするということは絶対にやらない人だとわかってきたのです。
それどころか、成績があがらない人や、ほかでやっていけなくなった人を引き取り、面倒をみていました。
部下の営業力の不足をかれのトップ営業で補っていたのです。

ある時、食事をしているときに、薬がないと眠れないと話をされました。
部下や顧客との人間関係を考えだすと、朝まで眠れないというのです。
彼の紹介営業に、隠された緻密な方程式があるようには思えなくなってきました。
計算深いひとではなく、繊細な人だったのです。
営業というと押しが強くで、厚顔という印象をもっていたので、この話はとても意外でした。
ましては、伝説のスーパー営業マンです。

そのときに、彼が助けた事業に失敗した方々たちの話もでました。
彼によれば、もちろん事業に失敗した側に問題はあるが、彼らにも言い分はある。
すべてが彼らの過失とは限らない。
運命に翻弄された面は、少なからずある。
自分も、取引先や部下に裏切られたり、根拠のない誹謗を受けて苦労したことがあると語っていました。
彼は、将来の見返りを求めて助けたのではなく、単に、同情して助けていたのです。
彼の紹介営業が強力であったのは、人の関係で、悩み苦しみ、薬なしには、眠ることもできないという繊細さがもたらしたものなのでしょう。
人を助けたいから助けた、しかしたびたび裏切られて傷つくという果てしない、摩耗のなかで悩み苦しみながらも、最後まで、人を助けたいと思いを捨てきれなかった繊細性が、彼の紹介営業を強烈なものにしたのです。
真剣に相手を心配して、ひとを紹介するわけですから、紹介された側に大きなインパクトを残すということでしょう。
だからこそ、そこに強い信頼関係が生まれるという図式だったのです。
紹介営業は、もともと、見返りを求めて、最初に、こちら側から情報や得意先を紹介するという行為です。
しかし、見返りなしに相手に貢献しようという、純粋な部分がないと、大成功はしないということなのかもしれません。
成功要因とは、逆説的ですね。
彼は、数年前に逝去されました。
現在は、次期社長の代となっています。
みかけとは裏腹な繊細さが、かれの寿命を縮めたのかもしれません。

general

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