ふろしきで日本一~弱者がとるべき経営戦略

この記事の著者

工藤聡生 
銀行、国際会計事務所勤務を経て開業。資金調達、事業計画による業績向上を支援している。早稲田大学政経出身、公認会計士・税理士。

楽天の『ふろしきや』は、月間3000枚の風呂敷を売り上げる、風呂敷通販におけるナンバーワンショップです。
風呂敷という、そもそも忘れかけられている商品で急成長を遂げたことは、注目に値します。
『ふろしきや』は、茨城県の有限会社プラネッツという従業員2名の中小企業によって運営されています。
決して、大きな会社ではありません。
呉服屋の2代目が創業したベンチャー企業です。
しかし、風呂敷販売においては、圧倒的な成功を収めています。
その成功の要因は、ひとつには圧倒的な品揃えです。
ふろしきだけで900種類の在庫を品揃えしているというのだからすごい。
これは、弱者が強者に勝つ、ランチェスター戦略の実践と言えましょう。
ランチェスター戦略とは、局地戦に持ち込み、その局地においては、強者に対して兵力を上回るという戦略です。
『ふろしきや』は風呂敷という局地戦においては、いかなる大手の呉服店よりも、品揃えが勝っています。
ベストな風呂敷を求める人は、大手呉服店ではなく、このサイトを訪れざるを得ないのです。
だから勝てるのです。
逆にいうと、ランチェスター戦略を実践するために、ほかの企業が目をつけていない、風呂敷に全戦力を集中したということがいえるでしょう。
財務力の弱い中小企業が品揃えで圧倒的に勝利するためには、主要市場に特化するのは得策ではないのです。
大手が豊富な品揃えを用意している市場に、弱小企業が挑戦しても勝ち目はありません。
ですので、大手が注力していないニッチ市場に経営資源を集中するのです。

ただ、実際の企業の経営の成功は、単純なものではありません。
『ふろしきや』の場合も同様です。
実は、風呂敷に特化したサイトはほかにもいくつかあります。
『ふろしきや』の品揃えは確かに一番ですが、ただ、それだけが勝利の理由ではありません。
『ふろしきや』は、情報発信においても、同業者を圧倒しています。
呉服屋の女主人をしている社長の母親が、TPOに合わせて風呂敷に関する、さまざまなお役立ち情報を提供しています。
この女主人による、お役立ち情報の提供は、顧客がふろしきを選ぶ際に役立つだけでなく、顧客の需要を喚起するのに役立っているようです。
風呂敷は包み方ひとつとってもさまざまな手法があります。
女主人の提供する情報は、日本の伝統文化の魅力や、伝統的習慣のあり方を伝えてくれています。
サイトの訪問者は、文化的な慣習としての風呂敷への興味をそそられ、購買意欲を掻き立てられるのです。
『ふろしきや』は、品揃えという、誰でも考え付く差別化要因だけでなく、さらに情報発信においても、競合に差をつけています。
お役立ち情報の提供は、手間のかかる作業ですが、強い差別化要因を作り出します。
差別化に悩んでいる中小企業は、一考するべきでしょう。

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