工藤聡生
銀行、国際会計事務所勤務を経て開業。資金調達、事業計画による業績向上を支援している。早稲田大学政経出身、公認会計士・税理士。
ただ、高収益企業にとっては、借金は悪いものではありません
借金をするというと、赤字と結びつけて考える方はすくなくありません。
しかし、経営という観点からするとこの先入観は、間違っています。
上場している優良企業の決算書を見てください。
借入をしていない会社は、ほとんどありません。
借金=赤字ではないのです。
利益を伸ばしている会社は、借金が減るどころか、借金が増えていきます。
利益を伸ばすためには、運転資金と設備資金を投入する必要があります。
その資金を借金で調達するために、借入が増えていくのです。
利益を伸ばすためには、借金は必要なのです。
理解しやすいように、簡単な設例で、ご説明します。
次のような業績の会社を想定しましょう。
≪借入による資金調達前≫
- 売上 100百万円
- 原価 80百万円
- 粗利 20百万円
- 人件費 12百万円
- 販管費 8百万円
- 利益 0円
- 粗利率 20%
この会社が10百万円の資金を借りたとします。
金利は、2%としましょう。
会社の業績はどうなるでしょうか?
この資金で商品を買って売ります。
在庫が年間に6回転すると想定しましょう。
結論を操作したという印象をぬぐうために、回転期間は控えめに想定しています。
まず、売上は、次の額だけ増加します。
10百万円×6回転×売価125%=75百万円
10百万円の資金で6回仕入をして、それに25%の利益を乗せて売るので、年間で、75百万だけ、売上が増加します。
売上の総額は、100百万円から175百万となります。
粗利は、175百万円の20%、すなわち、35百万円となります。
経費は、どれだけ増加するでしょうか?
売上に正比例して増加してしまうと考えがちですが、決して、そんなには増えません。
固定費は、売上ほどには増えないからです。
売上が増えたら営業マンは増えるかもしれませんが、比例的には増えません。
管理者や社長の頭数は、変わらないでしょう。
ですので、人件費は、比例的には増えません。
事務所の広さも、それほど広げる必要はないでしょう。
地代は、ほとんど変わらないでしょう。
かりに、ここでは、人件費と販管費の増加率は、50%としましょう。
これでも、結論を操作したという印象をぬぐうために、かなり高めに設定しています。
すると、人件費は、18百万円、販売管理費は、12百万円になります。
借入をしたので支払利息も、20万円発生します。
金利は、2%です。
資金調達して、資金を在庫投資へ投入した後の業績は次のようになります。
≪借入による資金調達後≫
- 売上 175百万円
- 原価 140百万円
- 粗利 35百万円
- 人件費 18百万円
- 販管費 12百万円
- 支払利息 0.20百万円
- 利益 4.8百万円
利益の増加額の方が、支払利息より大きいので会社の利益は増加します。
利益は、なんと、4.8百万円も増額します。
利益管理をしっかりとしている企業では、事業の収益率は、金利よりもはるかに高いのが通常です。
借金をして事業資金を投入すれば、利益は増加するのです。
なぜ、借金が悪という誤解がうまれるか?
それでは、なぜ、借金=赤字というイメージが定着しているのでしょうか?
赤字体質の会社が、経営改善を怠って赤字をたれ流し続け、借入により赤字補填をし続けることがあるからです。
計数管理に関心を示さない経営者が、よく陥るわなです。
借入による赤字補填は、麻薬のようなものです。
銀行に適当にうそをついてお金を借りられれば、経営改善という苦しみから逃れられるので、くせになるのです。
解決が難しい経営課題に取り組む必要もありませんし、社員を説得する必要もありません。
しかし、銀行は、膨れていく借金にいつまでも付き合ってくれません。
銀行は、赤字補填目的の融資はしないのが原則です。
ですので、やがては銀行に見捨てられます。
銀行に見捨てられると、資金が回らなくなるので、倒産します。
結果として、借金が残ります。
倒産すると、赤字補填のために借りた借金が残ってしまうのです。
これが、借金=赤字というイメージが定着してしまっている理由です。
しかし、借金が赤字を作り出しているのではなく、事業の赤字が、借金を作り出しているのです。
経営の失敗により、お金が無駄に使われていることが、借金の原因であり、借金が赤字を生み出しているわけではありません。
事業の収益性が、しっかりとしており、1~2%という低金利より上にありさえすれば、借金をすることより利益は減るどころか、事業規模の拡大により増加するのです。
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