従業員の給与及び退職金に関わる節税対策

この記事の著者

工藤聡生 
銀行、国際会計事務所勤務を経て開業。資金調達、事業計画による業績向上を支援している。早稲田大学政経出身、公認会計士・税理士。

給与の締め日以降の発生額を未払計上する

給与の締め日が末日でなければ、締め日と末日までの間も労働対価である給与は発生しています。
その発生額は、締め日が未到来であっても、決算上は、経費として未払い計上できます。
例えば、20日締め25日払いであれば、21日から月末までの期間に対応する給料を未払計上することができます。

ただし、役員報酬の場合は、日割りという考え方がないので、経費にできません。
現金支出の不要な節税対策なので、是非、実行してください。

社会保険料を未払い計上する

厚生年金保険料や健康保険料は、前月分を当月に払っています。
ですので、経費となる会社負担分については、事業年度の最終月の分を未払い計上できます。
現金支出をせずに節税できる対策なので、ぜひご検討ください。

労働保険料を未払計上する

概算労働保険料は、申告書を提出した日に経費計上できますので、分割納付をしている場合には、支払がまだでも未払計上により経費とすることができます。
確定労働保険料は、申告書を提出した日に経費計上できる上に、保険年度(4/1~3/31)が終了していれば、提出前でも未払計上することができます。
確定保険料については、結果として、4月決算、5月決算、6月決算の会社は、確定した不足額を未払計上することができます。
これらの対策は、現金支出をしなくとも実行できるので、是非、ご検討ください。

支払っていない未払いの賞与を経費計上する

賞与は、原則的には実際に支給しなければ、経費には計上できません。
しかし、3つの条件を満たせば、期末時点で未払計上により経費にすることができます。
その三つの条件とは、

  • 決算賞与をもらう従業員の全員に期末までに支給額を通知する。
  • 翌期1ヵ月以内に実際に支払うこと。
  • 決算賞与の額を経費として処理していること。

従業員に賞与を払っても経費にできないときがあります

従業員への賞与は、原則として損金になります。
ただし、賞与をもらった人が従業員として認められず、役員とみなされ、賞与が経費として否認されてしまう場合あります。
ご本人と、親族が一定比率以上の株式を所有して、かつ、ご本人が経営に参画している場合です。
こういった場合には、定期同額で報酬を支払うようにしてください。

退職の事実がなくとも退職金を払える

退職金は、基本的には、退職の事実がなければ計上はできません。
しかし、役員に昇格したときは、会社を辞めなくとも、退職金を経費として計上できます。
後継者等が、役員に昇格したときに、節税対策として使える手法です。
ただし、退職給与規程に基づき、事業年度末までに実際に支給する必要があります。

中小企業退職金共済で節税

従業員に対する退職金は、本来は支払ったときにしか費用処理できません。
しかし、中小企業退職金共済に加入することにより、将来の従業員退職金の原資として毎月支払う掛金を前倒しで費用処理することができます。

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