SWOT分析を実例で学ぼう

この記事の著者

工藤聡生 
銀行、国際会計事務所勤務を経て開業。資金調達、事業計画による業績向上を支援している。早稲田大学政経出身、公認会計士・税理士。

事業計画書においては、差別化戦略を明らかにしなければなりません。
価格、付加価値、営業戦略、場所、チャネルの要素において、競合他社にまさっていなければ会社は生き残ることはできないからです。
差別化戦略を考えるために、SWOT分析といわれる手法がよく使われます。
SWOT分析では、まず、市場の変化がもたらす機会と脅威と、自社能力の強みと弱みを冷静に整理して、表にまとめます。
次に機会、脅威、強み、弱みが整理された一覧表を眺めながら、市場がもたらす機会と脅威に対して、自社の強みを生かし、弱みを克服するにはいかなる差別化戦略をとるべきかを検討します。
以下では、実際の事例を使って、SWOT分析のやり方をご説明します。
どんな業種に方にも理解しやすいように、レストランの事例を取り上げました。

東京近郊の、あるイタリアンレストランのSWOT分析

内部分析強み(STRONG)弱み(WEAK)
  1. パスタ料理の評判がよい。
  2. イタリアで修業している息子がいる。
  3. 地元客のリピート率が高い。かれらをデータベース化している。
  4. 新メニューの開発力には自信がある。
  5. 有機野菜を使用。
  6. 店をいつも清潔にしている。
  1. 新規顧客が少ない。
  2. スタッフの定着がよくない。そのため、接客マナーの訓練が十分でない。
  3. 人気メニューが売り切れになることがある。
  4. 店の宣伝をしていない。
  5. 計数管理が苦手。
外部要因機会(OPPORTUNITY)脅威(THREAT)
  1. 女性客が増えている。
  2. ワインの人気が高まりつつある。
  3. イタリアンレストランの人気が高まりつつある。
  4. 健康志向が強まっている。
  5. 高価でもおいしければ売れる時代となっている。
  6. 中堅サラリーマンが多い住宅街が近くにある。
  1. 退職した高齢者の人口が増えている。
  2. ちかくにイタリアンレストランができた。
  3. 近隣に安価なファミリーレストランが進出してきている。

強みを機会に生かす戦略

  • メニュー開発力を生かして、イタリアンレストランとしての評価をさらに高める。イタリアで修行している息子のアドバイスも利用する。女性を中心として市場は拡大している以上、売上をさらに伸ばす余地があるはずである。
  • イタリアで修業している息子の助言も入れながら、安くておいしいイタリアンワインの仕入ルートを開発する。
  • リピーターへの割引制度を導入し、地元客をさらに深堀する。

強みで脅威に対抗する戦略

  • メニュー開発力、本場で修行している息子からのアドバイスを利用して、本格的イタリアンレストランとしてより差別化を図り、お客がちかくにできたイタリアンレストランに流れないようにする。
  • 本格的イタリアン料理、有機野菜をより前面に出して、格安をセールスポイントにしたファミリーレストランと差別化を計る。

弱みを補完して機会を生かす戦略

  • メニュー開発、イタリアンワインの開拓、息子との協議に、スタッフを積極的に参加させて、かれらにとって仕事をより創造的なものとし、店を多くのことを学べることのできる「学校」にする。
  • スタッフの定着率の改善は、在庫管理の改善による人気メニューの売切防止、計数管理の強化につながるはずである。市場が拡大している以上、インターネット、ちらし等とつかって宣伝を強化し、地元以外のお客も集客する。
  • 休みの日に店舗を地元客に開放して、店を知らない潜在顧客に店のことを知ってもらう。

弱みと脅威に対処する戦略

  • 上記の諸策を打つことによって、弱みと脅威を克服していく。

SWOT分析は、差別化戦略を考えていくときにとても役だつ分析ツールです。
あらゆる業界に適用可能ですし、中小零細企業にも有用な分析手法です。
ぜひにご活用ください。

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