工藤聡生
銀行、国際会計事務所勤務を経て開業。資金調達、事業計画による業績向上を支援している。早稲田大学政経出身、公認会計士・税理士。
事業計画書の必要性
▼事業計画書の三つのメリット
事業計画書を作成することには、三つの大きなメリットがあります。
- 資金調達の実現。
- 社員の目標管理の導入。(ドラッカーが最初に主張した経営管理手法です)
- 事業の落とし穴や事業計画の矛盾点を事前に発見できる。
いずれも中小企業の経営に大きなメリットを与えてくれます。
▼資金調達の実現-事業計画書のメリット①
銀行からお金を借りたり、ベンチャーキャピタルや投資家から出資してもらったりするためには、事業計画書が必要です。
自分でどんなに良い事業プランだと思っていても、お金を出してもらうためには、事業計画書を作って事業の詳細について情報を提供する必要があります。
相手の立場になって考えてみてください。お金を出すということにはリスクをともないます。銀行やベンチャーキャピタルは、あなたの事業計画の実現可能性についてじっくり検討し、出したお金が回収できるかを検討しなければならないのです。
口頭でいくら説明しても相手が納得してくれることはありません。
銀行の場合は、審査担当者の決済が必要になります。窓口となっている担当者からの伝聞だけでは、説得力に欠けます。銀行を監督検査する金融庁も、事業計画書(経営計画書)の作成能力は、会社の信用格付けの重要な要素とするべきであると考えています。
ベンチャーキャピタルや投資家の場合には、事業計画書がなければ、そもそも出資を検討してもらえず、門前払いされてしまいます。第三者の出資により財務力を強化されたいのであれば、まずは、事業計画書を作成してください。
▼社員の目標管理の導入-事業計画書のメリット②
目標管理とは、ドラッカーが推奨した経営手法です。
会社の目標を達成するために、個々の社員がどんな目標を達成しなければならないのかについて、社員のひとりひとりに自ら考えさせる経営手法です。社員自らに、個人目標を設定させ、さらに、その進捗や実行を社員個人に主体的に管理させます。
多くの中小企業経営者は、社員とのコミュニケーションが不足しています。社員に対する不満を抱えている一方で、その不満を口に出せずにストレスを抱えている社長は少なくありません。「なぜ、私の言っているとおりにできないのだ。」という不満をよく耳にします。中には、「大変だ。大変だ。」と騒ぎたてて、社員にさまざまな指示をとりとめもなく叫び続ける経営者もいます。こういう経営者がいる会社では、社員は、混乱し、萎縮し、なにをやっていいかわわからず、経営者の怒りが自分の方向にこないことだけを祈り続ける日々を過ごします。
これに対して、ドラッカーは、社員のエネルギーを引き出すには、命令を上から怒鳴り続けるよりもはるかに効果的な方法があると主張したのです。社員に何をなすべきかを自分で考えさせ、その進捗を管理する方が、はるかに大きな力を社員から引き出せるというのが彼の意見です。
多くの中小企業の経営に関わってきたわれわれの経験からしても、まずは社員に考えさせ、その考えの間違っている点を叩く方がずっと効果的です。社員に個人目標を考えさせた上で、「おまえ、これはここがまずいよ。」といった方が、はるかに強く、社員の心に社長の言葉が残るのです。
社員の目標意識の変革は、営業力の強化や商品・サービスの改善につながり、必ず、売上の増大となって跳ね返ってきます。
目標管理は、多くのエクセレントカンパニーで採用され、大きな成果を挙げています。中小零細企業でも威力を発揮する経営管理手法です。事業計画書の作成を通じて目標管理を導入されることをお勧めします。
▼事業戦略の修正-事業計画書のメリット③
事業計画書の作成は、事業の基本コンセプトを仮説検証するプロセスです。
経営者は、事業に関して必ず、基本コンセプトを持っています。基本コンセプトとは、ターゲットとしているお客のニーズや、競合に対する差別化の仕方(勝ち方)、商品・サービスのあるべき内容についての認識です。
意識するとしないに関わらず、すべての中小企業経営者は、ターゲットとしている顧客ニーズ、競合他社に対する差別化の仕方、商品・サービスの設計に関してひと通りの考えお持ちです。
ただ、その基本コンセプトが正しいとは限りません。あるときは正しかったかもしれませんが、時代が変わって正しかった考えが古びて、通用しなくなってしまうこともあります。
事業計画書を作成するなかで、経営者は、顧客や社員とコミュニケーションをとることになります。その中で、事業の基本コンセプトの矛盾を発見し、それを修正し、正しい基本コンセプトにたどり着くことができるのです。
事業計画書の作成を通じて、事業コンセプトの誤りに気づくことができるのです。早期に事業コンセプトの誤りに気づくことができれば、その分だけ、損失を軽減することができます。
以上が、事業計画書がもたらす三つのメリットです。
事業計画書は、慣れてくれば、社長や社員が、毎年、数時間の時間を投入するだけで作成することができるようになります。
事業計画書の作成は、大変に大きなメリットをもたらします。
資金調達を容易にし、社員の意識を大きく変革し、最終的には会社の売上を伸ばし、経営の落とし穴に事前に気づかせてくれます。
事業計画書の作成を是非に習慣化してください。
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