工藤聡生
銀行、国際会計事務所勤務を経て開業。資金調達、事業計画による業績向上を支援している。早稲田大学政経出身、公認会計士・税理士。
銀行員にアピールできる、簡便的な事業計画書の作り方
事業計画書は、資金調達を実現する魔法の杖と言われています。
銀行融資折衝では、説得力のある事業計画書は、確かに威力を発揮します。
融資の可否を決裁するのは、いつも接している渉外の営業マンではなく、融資係、支店長、本部の審査部です。
直接に会うことはできないので、社長の言葉は届きません。
事業計画書という文書を使わないと、伝えたい情報が伝わらず、会社の実力を訴求することができないのです。
ただ、事業計画書を作成しようとして手引き本を探しても、なかなか良い教科書は見つかりません。
わたしも数十冊は目を通してきましたが、アカデミックすぎたり、資金調達という観点からは、ピントがずれていたりする本ばかりです。
目的は、資金調達ですので、銀行に強くアピールする事業計画書を手間をかけずに作りたいというのが中小企業の本音ですが、その要望にぴたりと会うような良書は意外とないのです。
今回は、わたしの経験から、銀行融資を調達するために手軽で効果のある方法を紹介します。
損益計画に追加資料をつけて肉付けして、銀行に提出するという方法です。
難しい教科書を何冊も読んで、フルパッケージの事業計画書を作る必要はありません。
損益計画とは、翌事業年度の予想損益計算書のことです。
損益計画の予想利益が大きいほど資金調達は有利となります。
損益計画を作るときは、直前期の損益計算書を基にして、売上増加、原価率改善、経費削減の三つの経営対策を組み合わせて、より高い利益水準を目指しましょう。
この損益計画に以下にあげた8個の資料を添付するだけでも、簡易版ではありますが、説得力のある事業計画書になります。
8個すべての資料を添付するのが難しければ、できる資料だけでも添付してください。
それだけでも、資金調達は、かなり有利になります。
- 経営理念を文書化する。社会貢献の意思を面倒くさがらずにアピールしてください。社長が良いひとだからといって銀行は、お金は貸してはくれませんが、くそまじめな人という印象を与えることができれば銀行折衝は、有利になります。まじめだから簡単には借金を踏み倒さないだろうと思わせることはできるのです。
- ターゲットと会社の強みを文書化する。どんな強みをつかってどういったターゲットを狙いうちにしているのかをわかりやすく説明してください。強みとは技術力や販売力のことです。なんとなく場当たり的に経営をしているのではなく、戦略的な優位性があることをアピールするための資料です。
- 狙いとするターゲット市場が伸びていることをグラフなどの視覚的な資料で示してください。世の中にはたくさんの業種があります。日本標準産業分類でも、約1,500の種類あります。1つの業種には、また、さまざまな顧客セグメントがあります。銀行マンは、基本的には個々の顧客セグメントの市場動向はわかりません。こちらから積極的に資料を提示すれば、案外と信じてもらえます。会社のターゲットとしている市場が伸びていると評価してもらえれば、会社の格付け評価は高まります。
- 顧客リストを添付する。顧客リストが長ければ長いほど、売上を安定的に確保できることをアピールできます。
- 販促方法を具体的に示す。ちらし、DM、ホームページの画面コピー、セミナー案内、フリーペーパー等を提示する。視覚的な資料で販売力があることを訴求するのです。視覚的な情報は、文章でだらだらと販売戦略を記述するよりも、はるかに強い説得力を持っています。
- 製品やサービスについて視覚的な情報を提示して、具体的なイメージを持ってもらいましょう。視覚情報とは、例えば、製品の写真、お店の完成予想図、ITビジネスにおける取引フロー図などです。視覚情報を通じて製品やサービスへの理解は深まります。製品やサービスへの理解が深まるほど、会社への評価は改善します。
- 価格リストを添付して、その価格が競合よりも安いことをアピールしてください。ライバルよりも、安い価格でも利益を確保できる企業体質にあることを示せば、損益計画への信頼性は高まります。
- 資金繰り表を作成して、営業キャッシュフローは最終的にはプラスになることをアピールする。営業キャッシュフローが長期的にはプラスであることを納得させることができれば、運転資金はもちろん、設備資金の調達も決して難しいことではありません。
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