赤字になったら、損益計算書は下から見てください

この記事の著者

工藤聡生 
銀行、国際会計事務所勤務を経て開業。資金調達、事業計画による業績向上を支援している。早稲田大学政経出身、公認会計士・税理士。

会社の利益は、次の算式で計算されます。

  • 売上-変動費=限界利益
  • 限界利益-固定費=利益

変動費は、売上に比例して増減するコストで、材料費、商品原価、販売手数料などが典型例です。
固定費は、売上に無関係に一定のコストです。具体例は、人件費、減価償却費、地代などです。
利益は、売上から変動費と固定費を差し引いた残りです。
損益計算書上は、だいたい、売上、変動費の勘定科目、固定費の勘定科目の順番に並んでいます。
経営の目標は、この利益をプラスにすることです。

損益計算書を見るときに、上から見て解釈するかたがいますが、それはお薦めできません。
できれば、損益計算書は、下から見て解釈してください。
とくに赤字のときは下からみていただきたいのです。
損益計算書を上から見ると、利益がマイナスとなってしまったときは、最期に差し引かれる固定費を削ろうという発想に陥りがちです。
どんな会社でも、固定費で目立つのは、人件費です。
業種を問わず、固定費の相当割合を占めています。
人減らしや減給で利益を確保しようという話になってしまいます。
リストラは、社員の忠誠心を傷つけ、しいては、会社をよくしようという意欲を著しく傷つけるのでお薦めはしません。
それに日本では、解雇の要件は厳格に解釈されており、実行するのはとても困難です。
大企業ではリストラ部屋を設けて巧妙かつ残忍に中高年のくびをきっているようですが、中小企業でそんなことをしたら、社員はやる気をなくし、やめてほしくない人までやめてしまうでしょう。
そもそも、中小企業には、無断な人材も経費も少ないので、固定費削減の余地は大きくはありません。

むしろ、損益計算書は下から見るようにしてください。
まずは、固定費がどれぐらい発生しているのかを把握します。
次にその固定費と等しい限界利益を生み出すだけの売上はいくらなのかを計算するようにしてください。

目標売上高=固定費÷限界利益率

※限界利益率=限界利益÷売上です。限界利益という概念がわかりづらいかたは、粗利益率と読み替えていただいても結構です。

例えば、限界利益率(粗利益率)が25%の製品やサービスを売っている会社があるとします。
毎月の固定費が100万円であれば、
目標売上高=100万円÷25%=400万円
となります。
中小企業は、この目標売上高を実現するべく営業に全力を注ぐべきです。

売上を増やすためには、さまざまな知恵を絞って、新たな製品やサービスを見つける努力をしなければなりません。
新製品だけではありません。新たな販売方法や生産方法、業務フローが会社を救うかもしれません。
社長ひとりの知力には限界がありますので、ほかの人の意見を聞くようにしてください。
ライバル企業を謙虚に観察したり、顧客から話を聞いたり、社員からアイディアを募ったりするべきでしょう。
高慢な態度をとらずに、周囲の声に謙虚に耳を傾け、アイディアを探索してください。
会計士にしては変わったことを言うというかもしれませんが、中小企業が経費を削るには限界があります。
黒字化は、売上拡大で実現するべきなのです。

general

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