工藤聡生
銀行、国際会計事務所勤務を経て開業。資金調達、事業計画による業績向上を支援している。早稲田大学政治経済学部卒、公認会計士・税理士。
5年後、10年後に株式公開を目指すことのメリット
当事務所は、過去10年で10社ほどの株式公開に関与してきました。
そのいずれの会社も、創業したときには、株式公開できるなどどは、思っていませんでした。
たしかに、創業したばかりの企業にとっては、株式公開というと、とても縁遠いことのように感じられるかもしれません。
しかし、創業したての会社でも5年、10年後に株式公開を目指すことに違和感や不自然さはありません。
株式公開のハードルが下がり、最近は、社員数が20、30人程度の会社が株式公開を実現した実例はたくさんあるからです。
また、5年、10年後でも、株式公開という壮大な夢を追い求めることには、大きなメリットがあります。
たとえ、実現できなくとも、株式公開というロマンティックな夢を追い求めることにより、会社はとても強くなることができるのです。
以下、ベンチャー企業が株式公開を目指すメリットについてご説明します。
優秀な人材を数百万円も安く雇うことができる
優秀な人材を廉価な報酬で雇えることができることもあります。
トップ営業マンや優秀な技術者を半額の報酬で雇えたりします。
報酬を下げる代わりに、ストックオプションを発行することによって将来の夢を労働対価として与えるのです。
上場株価には、上限は設定されていないので、もらったストックオプションの価値は、会社の成長によっては、数千万円、数億円にもなりえるのです。
報酬を抑えられるだけでなく、会社を成長させれば、自分のストックオプションの価値が増加するわけですから、より大きな労働意欲や責任感を引き出すことができます。
売上げを飛躍的に伸ばすことができる
キーパーソンや取引先にストックオプションを保有してもらうことにより、かれらから協力を引き出し、売上げを飛躍的に伸ばすことが可能となります。
将来の株式公開に貢献することによって、その協力者や取引先は、ストックオプションの多大な値上がり益を享受することができるかもしれないからです。
セールスルートや、仕入れルートを押さえるために、対価として与えるのです。
その価値は、数億円を超えることもざらです。
ストックオプションには、不思議な魔力があります。
いつ孵化するかわからない金の卵なのです。
現金とちがってまだ価値が実現していないので、ずっと協力を継続させることができます。
その意味では、現金で釣るよりも、効果が持続します。
返済不要の数億円の資金を手に入れられる
株式公開を目指すことによって、ベンチャーキャピタルや投資家から、数千万円~数億円の増資を受けることができることがあります。
第三者割当増資に成功すれば、会社の財政的な足腰は、見違えるほど強くなります。
ただ、計画的な資本政策をきっちり組むことが肝要です。
第三者割当増資の株価は、高く設定しないと、創業者の持分比率が50%以下となってしまい、経営権を失ってしまいます。
ですので、株価を高く誘導しなければならないのですが、投資家もばかではないので、説得力を持たせなければなりません。
さらに、株式の希薄化は、公開後も進行するので、それも含めて、経営者の支配権が揺るがないように、資本政策を設計する必要があります。
従業員が辞めなくなる
中小企業にとってできる従業員の退社はとても手痛い損失です。
会社が株式公開をビジョンとして掲げることにより、従業員の士気があがり、退社率が減少します。
中小企業にとってできる従業員の退社はとても手痛い損失です。
会社が株式公開をビジョンとして掲げることにより、従業員の士気があがり、退社率が減少します。
将来性のある会社だと社員がおもえば、退社率が減少するのは、自然な流れです。
社員の平均勤続年数が上昇することにより、会社のサービスや製品の質が向上し、売上もさらに増加します。
社員にプレッシャーをかけやすくなる
株式公開というのは、お祭りのような側面があります。
集団がちょっとした熱気に包まれるのです。
ですから、株式公開という錦の御旗があると、『夢を実現するためにもっとがんばろうよ』と、社員にプレッシャーをかけやすくなります。
もっと大きながんばりを従業員から引き出せるようになります。
それにより、いまよりも、より大きな売上を達成することができます。
極端な例では、1人の社員から、2人分の貢献を、株式公開という錦の御旗のもとに、要求することができるようになります。
株式公開という壮大な夢を追い求めるだけで、やり方によっては、大幅な利益改善を享受することができるのです。