事業計画書の書き方~資金調達、社員活性化のために

この記事の著者

工藤聡生 
銀行、国際会計事務所勤務を経て開業。資金調達、事業計画による業績向上を支援している。早稲田大学政治経済学部卒、公認会計士・税理士。

資金や人について、苦悩していない経営者は、世の中にはいないといっても過言ではないでしょう。
『資金繰りが大変だ』
『赤字なのでお金が借りられそうもない』
『零細企業なので運転資金が借りられない』
『借金が増える一方で、年々、くるしくなっている』
『会社にお金が残らない』
『社員が思ったように働いてくれない』
『社員があてにならない』
『うちのような零細企業には、いい人は来ない』

当税理士事務所は、こういった悩みをお持ちの経営者には、事業計画書を作るようにお薦めしています。
事業計画は、会社の資金繰りをよくするためには不可欠です。
損益計画と資金繰り計画を何度もシミレーションすれば、課題の解決方法は、なんとか見えてくるものです。
たとえ、零細企業でもきちっと資金繰り計画をつくれば、必要な資金は、調達できます。
赤字でも、事業計画で原因とその解決方法を明確に示せば、銀行はお金を貸してくれます。

事業計画は、社員を活性化するのにも役立ちます。
社員と一緒になって事業計画書をつくることにより、社員と目標を共有し、社員から大きな貢献を引き出すことができるようになります。
より大きな売上、よりよい製品、より良いサービスを社員から引き出すことができるようになるのです。
それにより、会社は、赤字になりづらい、強い会社に生まれ変わることができます。
社員がいい会社だなと思えば、社員が良い人をひっぱってきてくれます。
人手不足の時代には、社員経由の縁故採用は、有効な採用戦略です。

事業計画書作成のメリットは、社長にもあります。事業計画書を書くことによって、社長自身が事業の成功要因にあらためて気づくことがよくあります。
社員だけでなく社長にも気づきがあるのです。
社員からのアイディアのなかには、必ず、光る素材があります。
事業計画を作る中であらためて、自社の強みと集中すべき事業分野が明らかになっていきます。

わずか数時間の時間を割いて事業計画書を作るだけで、さまざまなメリットを享受できます。
当事務所が、ひと手間かけて、顧客に経営計画作成サービスを無償で提供しているのは、事業計画が中小企業の生き残りに大きく貢献できるからです。
以下に事業計画書の作り方をステップごとにご説明します。

【事業計画書の書き方】

ステップ事業計画書の書き方

経営理念の発見

社長が心の中で本当に感じている理念や夢を表現してください。
事例集から借りてきた美辞麗句をならべても社員の共感を得ることはできません。

また、理念と集中化戦略は、首尾一貫している必要があります。(事業計画書の書き方鉄則①)。

差別化できる市場を選ぶ

自社の強み弱み分析により、勝てる市場を絞り込む。

勝てる理由が明確にある場合にのみ、経営資源を投入するのが鉄則です(事業計画書の書き方鉄則②)。

絞り込んだ市場の顧客ニーズを完全把握する

現場の意見に耳を傾け、顧客に問いかけ、改めて顧客のニーズを見つめなおす。

人は、充足させなければ痛みを感じるほどの強い欲求がない限りは、お金は使いません。

儲からない会社は、自社の都合で顧客のニーズをゆがめて解釈しています。

健全な懐疑心をもって自社製品やサービスがお客の強いニーズに対応するものであるのかを再検討する必要があります(事業計画書の書き方鉄則③)。

市場の実地調査

市場の規模、成長性を調べる。

十分な規模と成長があることを、社長自らが実地に調査する。

縮小しているマーケットに参入しても苦しい思いをするだけです。

直感で予測するのではなく、自分の目と耳で情報を集めてください(事業計画書の書き方鉄則④)。

顧客のニーズにあった、製品・サービスを設計する

製品・サービスが、ニーズにマッチしていること。

ひとりよがりの製品・サービスを提供しない。

また、オーバースペックによるコスト高も避けること。(事業計画書の書き方鉄則⑤)。

組織、業務体制の整備

必要なスキルをもった人材を確保し、役割分担のはっきりした効率的な組織を作る(事業計画書の書き方鉄則⑥)。

販売戦略と価格戦略の決定

どうやって顧客に自社のことを知ってもらい、アピールするのかを決める。

中小企業は、販売促進に多額のコストをかける余裕はありません。

ちらし、雑誌、インターネット、DM、紹介営業などの低コストの販促手法のうち、自社にもっとも適した方法を選択し、具体的な販促の作業手順を決めます(書き方鉄則⑦)。

販促は、とにかく継続することが大切です。諦めずに継続してください。

つぎに、価格戦術ごとに損益計画のシミレーションを実施して最適の価格戦術を見つけ出します。

収益を確保できる範囲内で、ぎりぎりのレベルに価格を設定します(事業計画書の書き方鉄則⑧)。

損益計画の策定

資金繰り計画の策定

損益計画と資金繰り計画を策定します。

何度も、損益計画と資金繰りのシミレーションをして、最適の戦略を評価していきます。

全社の損益計画を実現するために、社員毎の個人目標を個別に話し合って決定します(書き方鉄則⑨)。
この社員と向き合って目標を決めるのは、とても大切なプロセスです。

会社は人を通じてしか、儲けることはできません。

社員ひとりひとりが、強い動機付けを維持し続けられなければ、よい業績は維持できません。

業績未達なら、長期的な視野にたって、育成・教育し、社員の動機付けを強化してください。

厳格な業績評価も大切ですが、育成・教育しようという姿勢は、より重要です。(事業計画書の書き方鉄則⑩)。


資金繰り計画の策定


自己資金が不足している場合は、ファイナンスの仕方を決めます。

人員投入、投資、ファイナンスのスケジュールも作成する必要があります。

いつ、いくら資金調達をして何に投資するのかを決めるのです(事業計画書の書き方鉄則⑪)。

経営管理(個人目標の設定と管理)

月次ベースで、事業計画書の推進状況をチェックする。

目標利益に届かなければ、損益計画・資金繰り計画をシミレーションしなおして新たな戦略を見つけ出します。

同時に社員が個人目標を達成しているかをチェックする。

未達成であるなら、その理由と対策を社員と向き合って話しあい、適切な指導、教育を行います。

このプロセスをうまくすすめて、社員をやる気にさせて、ひっぱっていくことが、リーダーシップそのものなのです(事業計画書の書き方鉄則⑫)。

事業計画書は実現可能なものでなければなりません。
事業計画書を策定するなかで、もっとも大切なのは、社長が社員と向き合い、個別目標を策定する行為です。
個人目標を設定しなければ、社員から貢献を引き出すことはできません。
個人目標の典型は売上目標でしょう。
売上目標のない営業マンが売上を伸ばすことがあるでしょうか?
決して、ありえません。
人は、目的地がないと漂流してしまう特性をもっているからです。

個人目標は、数値化できない定性的な目標も含みます。
ですので、経理総務といった間接人員にも個人目標を設定してもらいます。
たとえば、経理であれば、『現場に数字をわからせて、利益管理を学ばせる』というのも、立派な個人目標です。

個人目標が実現できたら、賞与等に反映して、承認を与えてください。
未達成であれば、指導・教育的な姿勢で臨んでください。
個々の社員に対して、『一緒に成長しよう』というメッセージを送ることが大切です。
怒って相手を否定したり、罰として賞与を大幅に減給しても、目標は達成できません。
目標に向けて社員の動機づけを維持・改善することが大切です。

また、ばらばらに個人目標を設定させてもだめです。
事業全体の目標を設定し、その全体目標と、社員ごとの個別目標を調和させる必要があります。
社員ごとに個別目標を設定し、貢献を引き出すためには、全体目標を定める事業計画書が不可欠なのです。

事業計画の全体目標⇒個人目標⇒教育⇒社員の動機付け強化⇒売上増加

という図式になります。
社長の戦略的発想からの全社目標と、社員の現場感覚から生まれる個人目標を調和させることが、強い会社を生み出すのです。

上記の事業計画書の書き方を参考にしてぜひ、血の通った事業計画書を作成してください。

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