日本政策金融公庫の据置期間とは?

据置期間とは
この記事の著者

工藤聡生 
銀行、国際会計事務所勤務を経て開業。資金調達、事業計画による業績向上を支援している。早稲田大学政経出身、公認会計士・税理士。

据置期間とは

据置期間とは、融資を受けた際に元金の返済を猶予し、利息のみを支払う期間のことを指します。この期間中は元金の返済が発生せず、利息のみを支払うため、事業開始直後など収益が安定しない時期に資金繰りを安定させるために利用されます。

据置期間の理由

据置期間は、事業が軌道に乗るまでの収益が上がらない期間を考慮して設定されます。特に創業当初は利益が出にくい傾向があるため、この期間を利用することで資金繰りが楽になります。

とくに創業期は、なかなか企業の売上は伸びません。一方で、経費は、発生してしまいます。しばらくの間、借入返済を待ってもらえれば、資金繰りは、とても楽になります。資金繰りが楽になれば、その分だけ、安心して、事業に集中できるので、より早く売上を伸ばすことができます。

据置期間は、どれぐらい設定できるのか

無担保無保証で借りた創業融資でも、据置期間の設定は可能です。とくに創業したての会社は、収益の確保が難しいためです。
日本政策金融公庫では、据置期間は以下のように設定されます:

  • 運転資金:最大1年間
  • 設備資金:最大2年間

ただし、これらはあくまでも最大期間であり、企業の状況や担当者の判断によっては、据置期間が3か月~6か月程度になることもあります。担当者が借り手の返済能力をどう判断するかに依存します。

据置期間の設定についての注意点

希望する据置期間が必ずしも設定されるわけではなく、日本政策金融公庫の担当者によって最終的に決定されます。交渉次第の面はありますが、1年や2年という期間が当然の権利という姿勢で交渉しても、据置期間は、伸ばしてくれません。月次の資金繰り表などを使って、合理的かつ冷静にこちらの希望を提示しましょう。

具体例

例えば、日本政策金融公庫から400万円の融資を受けたと仮定しましょう。返済期間は、6年、据置期間は、12カ月、金利は、2%とします。据置期間中の1年間は利息のみの支払いとなり、その後5年間で元金を返済していくことになります。このように据置期間中は毎月の返済額が軽減されるため、事業運営に集中しやすくなります。

具体的には、下記のようになります。据置期間後は、400万円÷5年=80万円の元金を返済しなければなりませんが、元金が減少するにすれて、利息支払い額が減少していくことがわかります。

据置期間を利用した創業融資の返済計画

参考となる私どもの具体的な事例

新型コロナウイルス感染症特別貸付の事例 

日本政策金融公庫から3,000万円の融資を受けた事例では、据置期間が1年設定されました。この時は、中小企業の事業継続を支援しなければならないという方針だったので、据置期間の設定が甘かったです。自然災害時には、据置期間を長く設定してくれますが、こういった措置を標準と考えるべきではありません。

美容院、飲食店などの店舗系のビジネスの事例 

わたくしども経験ですと、美容院などの店舗系のビジネスを開業する際、既存の顧客を持っていると判断されるとすぐに売上が見込めるため、据置期間は短く設定される傾向があります。逆に、これから新規顧客を開拓するということであれば、据置期間は、長くなります。同じ業種だからといって同じ据置期間が設定されるわけではありません。据置期間を長く設定したければ、月次ベースの資金繰り計画を出して、なるべく長く、据置期間を設定してもらうようにしましょう。

据置期間後のデメリット

据置期間中は利息のみの支払いとなるため、元金は減らず、据置期間終了後には元金と利息の両方を返済する必要があります。上記シミュレーションでもおわかりのとおりに、返済期間が短くなるので、据置期間後の元金の返済額は、大きくなります。それをあらかじめ考慮した資金繰り計画を立て、準備しておく必要があります。その時点で、資金繰りがきつくなるということでしたら、他行などにもあたり、事前に追加融資の準備を進める必要があります。
また、当初から資金繰りにそれほど問題がないということでしたら、据置期間を利用せずに、早めの完済を目指すのも、一つの財務戦術です。
ただ、わたくしどもの印象としては、創業したての起業の場合は、想定どおりにビジネスが成長することは少ないので、据置期間は、設定しておいた方がよいでしょう。

まとめ

日本政策金融公庫の据置期間は、事業開始直後など資金繰りが厳しい時期に返済負担を軽減するために設けられています。運転資金では最大1年間、設備資金では最大2年間とされていますが、企業の状況や担当者の判断によって異なる場合があります。据置期間の最中は、資金繰りが楽になり、より安心して事業に集中できるというメリットがありますが、一方では、返済期間が据置期間の分だけ、短くなるので、その分だけ資金繰りがきつくなるというデメリットがあります。ですので、据置期間を適切に設定するためには、慎重に、資金繰り計画を立てておくことが重要です。

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