工藤聡生
銀行、国際会計事務所勤務を経て開業。資金調達、事業計画による業績向上を支援している。早稲田大学政経出身、公認会計士・税理士。
ピーターパン 【集中化戦略の典型的な成功例】
千葉県船橋市周辺に展開するパン屋さん『ピーターパン』は、6店舗で、18億円もの売り上げを上げています。
十数年前には、決して好業績の会社ではありませんでした。
この会社は、さまざまな事業変革によって収益アップを実現してきました。
その軌跡を説明いたします。
当初は、ピザ屋とパン屋の両方をやっていました。
しかし、パン屋事業に集中するために、売上の3分の2を占める、ピザ事業を切り捨てました。
売上の大きい事業を切り捨てたのです。
しかも市場はピザの方が伸びています。
中小企業では、経営資源を集中させなければ勝てません。
経営資源を集中させて勝てるのは、売上の小さい方の事業だと判断したのです。
中小企業は、資金、人材が、限られているので、一方の事業に集中する選択は、間違った選択ではありません。
ピーターパンは、他の店と差別化をはかるために焼き立てパンを売ることにこだわりました。
パンは焼き立てがおいしいからです。
焼くロット数をすくなくして、焼き立てにこだわりました。
売れ筋になると5分おきに焼いています。
徹底したこだわりです。
ただ、職人は忙しくなりますが、効率的に作業すれば、追加的な人的投資が必要な対策ではありません。
コストを抑えながら差別化をはかるすぐれた対策です。
中小企業は、経営資源が限られているので、費用対効果を考えて戦術を立てなければなりません。
ピーターパンは、100種類以上のパンを提供しています。
種類が多くなれば、お客は喜びます。
ただ、ロストもおおくなります。
ただ、パン屋の原価率は、決して高くはありません。
材料費自体は、売価の11%ぐらいしかありません。
これも、投資コストの割に大きな顧客満足につながる施策です。
無料コーヒーも提供しています。
ただ、コーヒーは、ほとんど原価はかかりません。
一杯の原価は、30円から40円でしょう。
とても低いのです。
思い切った方策ではありますが、これで集客がはかれるのなら安いものです。
顧客へのインパクトは大きいですが、実は、コストはかからないのです。
家族向けのイベントを定期的に開催しています。
これも店舗の前の空きスペースを使うだけなので、少なくとも場所代はかかりません。
やりかたによっては大したコストをかけずに家族連れを集客できます。
新商品開発にも力をいれています。
定期的に一定数の新商品を出しています。
パンは、原価率は低いので新商品の開発コストは低く、しかも、社員のやるきを引き出せます。
さきほど申したようにパンの材料費率は、たかだか11%ぐらいです。
一方、パン屋で働く人々の夢は、自分のパンを作ることです。
安い投資で顧客に新鮮さを与えられるだけでなく、社員の動機付けもアップすることができます。
さらにピーターパンは、こういった施策によって得た利益を積極的に投資に回しています。
地域一番店となるために、大型店舗を作る投資をしたのです。
大型店舗を作ることにより、パン屋ならピーターパンという印象を地域の人々に与えました。
ナンバーワンという印象を与えるのはとても大切です。
ひとは、1番に惹かれるからです。
心理的なシェアを不動のものにすることができます。
この投資は、減価償却費、金利等の費用のかさむ行為です。
しかし、長期的に利益を安定的に確保するためには、避けてはとおれない施策です。
コストパフォーマンスのよい戦術により利益を積み上げ、その利益を長期的な大規模投資へ回したのです。
ピーターパンは、すべて投資に対して、常にその効果を考えつつ、変化し続けてきました。
それが、一般的には低収益であるパン屋という業界で、驚異的な収益性をほこる会社を生み出したのです。
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