赤字会社の銀行折衝方法

この記事の著者

工藤聡生 
銀行、国際会計事務所勤務を経て開業。資金調達、事業計画による業績向上を支援している。早稲田大学政治経済学部卒、公認会計士・税理士。

業績が悪化すれば、銀行は、よい顔はしません。
しかし、会社側からすれば、業績が悪いときほど、銀行からの資金支援が必要です。
業績が悪化した場合には、銀行に対してどう折衝すればよいのでしょうか?

情報提供量を増やして返済能力のあることをわからせる』というのが資金調達の鉄則です。
業績が悪化した場合にも、この原則は当てはまります。
業績は落ちているのですから、だまっていれば相手は、さらに悪い方に解釈します。
それをさけるには、積極的に情報を提供したほうが、よいのです。
業績悪化の原因とそれに対する対策を明確に説明してください。
業績分析は、商品、顧客、組織・体制の観点から、切り込むのがコツです。
具体的な、記述例を挙げましょう。

業績悪化の理由

  • A商品の売上が2,000万円落ちた。
  • 顧客のB社との取引が、3,000千万円減った。
  • 店舗や支店を閉じて、売上が、4,000千万円減った。
  • ○○のビジネスから撤退した。
  • 結果として、前期に比べて売上が○○千万円減少し、××百万円の経常赤字となった。

対策も具体的に記述します。
具体例を挙げます。

今後の対策

  • C商品が伸びている。C商品には、○○という技術的な優位性があり、需要が伸びているためである。
  • C商品は、来期には、少なくとも5,000万円の売上が予想される。結果として粗利益率が5%改善して、利益が1,000万円改善する。
  • D社との取引も、拡大しており、1,000万円の新規売上が予想される。
  • 役員報酬や、人件費、経費を3,000万円、圧縮する。
  • 結果として、500万円の経常利益を確保する。

対策は、数字を織り込んで具体的に記述してください。
記述が具体的であればあるほど、説得力は増します。
業績が落ちたということは、ネガティブ情報ですが、その原因を明確に説明しなければ、印象は、さらに悪くなり、融資審査は不利になります。
会社の業績を把握できていない、ダメな経営者というレッテルを貼られてしまいます。
それに対して、ネガティブな情報を詳細に記述し、かつ、対策を明確にすれば、金融機関の理解と支持を得ることはできます。
明確な対策を講じる経営者と思ってもらえるからです。
とくに、信用保証協会等の公的な融資は、『救い上げよう』という意識が強いので、業績悪化原因と対策を明確に記述することによって、融資の成功確率は格段に改善します。

なお、業績分析は必ず、文章にして渡してください。
銀行マンにいくら、口頭で説明しても、伝わりません。
融資審査は、書面審査です。
最終的な意思決定者である、支店長や本部は、書面に基づいて決裁します。
渉外担当の営業マンは、時間がないので業績分析を詳しくは書いてはくれません。
そもそも銀行マンは、意外に文章が下手です。
会社が書いて渡すしかないのです。
かならず、文章にして渡すようにしてください。
文書で渡すことにより、その文書は、稟議書に添付され、確実に、融資審査で考慮してもらうことができます。
将来の数字計画とあわせて、経営計画という形で、改善案を提出すればさらに効果があります。
銀行マンは、数字がすきですので、印象はさらによくなります。
ただ、そこまでの時間がなければ、A4一枚でも結構です。なにも提出しないよりは、はるかに説得力があります。

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