粉飾決算のデメリット

この記事の著者

工藤聡生 
銀行、国際会計事務所勤務を経て開業。資金調達、事業計画による業績向上を支援している。早稲田大学政治経済学部卒、公認会計士・税理士。

粉飾は麻薬のようなものです。
一度やるとやめられなくなります。
数字をいじるだけでお金を借りられて会社が回るのでとても楽です。
必死に営業をしたり、血がにじむような思いをして新製品を改良したり、業務改善をしたりする必要はありません。

しかし、粉飾は一度、始めると修正するのがとても苦労します。
簡単な例でご説明します。
利益がマイナス500万円の赤字の会社が粉飾をするとしましょう。
粉飾によって利益を1,000万円だけ水増ししたとしましょう。
マイナス500万円と、粉飾の1,000万円が相殺して、決算書上の利益は500万円となります。
この粉飾を解消するためには、翌期は1,500万円の利益を出さなければなりません。
当期の粉飾の解消のために利益が1,000万円だけ食われてしまうからです。
翌期は、1,500万円の利益と、粉飾の修正額とが相殺して、決算書上の利益は、同じ500万円となります。
しかし、マイナス500万円の赤字の会社が、1,500万円もの利益を出すのは至難のわざです。
いったん、粉飾を始めると粉飾を完全に解消するのはとても困難なのです。
粉飾をいったん始めると、翌期も1,000万円、翌々期も1,000万円と粉飾を続け、粉飾額がどんどんと蓄積していきます。
架空在庫や架空売掛金の残高が膨らみ続けます。
いつかは、銀行にばれて新規融資を止められてしまいます。
場合によっては、融資の一括返済をもとめられることもありえます。
粉飾は、麻薬と同じです。
いったん始めると習慣化して、最後には身を滅ぼすことになるのです。

粉飾を継続していると、経営者自身も会社の業績がわからなくなっていきます。
まさかと思われるかもしれませんが、この弊害は、必ず発生します。
最初の粉飾のときは、経営者はその内容がよくわかっているので、経営実態がわからなくなることはありません。
しかし、2、3年目になると数年度の粉飾が蓄積してきます。
また、粉飾の技法も、在庫、売掛金、固定資産、保険積立金、現預金と複数の勘定科目に及びます。
そうなると、過去分と当期分の粉飾が混在し、また、勘定科目も多岐にわたるので、経理の専門家でも、実態は把握しづらくなります。
黒字か、赤字かもわからなくなってしまいます。
実態がわからない状態で、経営ができるはずがありません。
粉飾している会社では、会社経営者自身が会社の実態がわからなくなり、会社の倒産を早めることになります。
まさかそこまで経理が混乱することはないだろうと思われるかもしれませんが、粉飾を継続している会社は、必ずと言ってよいぐらいに頻繁に起こる現象です。

粉飾決算から抜け出す方法

粉飾は、会社をどんどんとむしばんでいき、いつかは、会社は、袋小路に追い詰められます。
銀行に正直に相談しても助けてはくれません。
そんなことをしても、金融支援を打ち切られてしまうだけです。
粉飾から抜け出すには、経営計画に基づく、計画的な解消策しかありません。
経営計画に基づいて解消策を実施すれば、会社を強くするだけでなく、節税も図れます。

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