中小企業でも1%未満の金利で借りられる

この記事の著者

工藤聡生 
銀行、国際会計事務所勤務を経て開業。資金調達、事業計画による業績向上を支援している。早稲田大学政経出身、公認会計士・税理士。

銀行の金利決定メカニズム

銀行の金利はどうやって決まるのでしょうか?
ほとんどの経営者のかたは詳しくはご存知ありません。
しかし、支払利息を減らすには、銀行の金利決定のメカニズムを大雑把でもよいので、理解しておいた方がよいでしょう。
銀行の金利は、次の4つの要素の合計です。

金利=銀行の調達金利+銀行の経費+貸倒れ+利益

銀行は、外から調達した資金の金利を払い、銀行員の給与などの経費を支払い、さらに貸倒れを負担しています。
銀行は、これらの諸費用を負担しても、利益が出る水準に金利を設定します。
以下、項目ごとにご説明いたします。

銀行が貸すお金の大半は、自己資金ではありません。
預金者からのお金や、資金市場で借りてきたお金を又貸しています。
借りてきたお金ですから、銀行も利息を支払わなければなりません。
銀行の受取金利は、まず、この調達金利をカバーしなければなりません。
調達金利は銀行の資金調達力によって異なります。
例えば、メガバンクは、資金市場から安い調達金利で、資金を調達できるので、信用金庫に比べると受取金利を低めに設定することができます。

さらに、銀行員の人件費、システムコスト、地代などの経費も、銀行は受け取った利息から支払わなければなりません。
受取金利は、銀行の経費もカバーしなければならないのです。
経費率も銀行によって異なります
例えば、メガバンクは、貸し出し規模が大きいので、一件の貸し付けごとの経費率が低く、それに対して信用金庫は、中小企業が貸し出し先なので、一件ごとの貸し出し金額が小さく、事務効率が悪くなり、経費率がどうしても高くなってしまいます。
これは、信用金庫の金利のほうがメガバンクの金利よりも、高めになるもう1つの理由となっています。

お金を貸す以上は、貸倒れは必ず発生します。
貸倒れによる損失も、受け取った金利の中から負担することになります。
ただ、貸倒れリスクは、借入先の信用度合いによって異なります。
格付けが低いと貸倒れのリスクが高いと判断されますので、その分だけ、高い金利を要求されます。
メガバンクが、中小企業に対して、信用金庫と変わらないぐらいに高い金利を求めることがあるのは、この貸し倒れリスクを考慮しているためです。
高い金利を要求されたら自社の格付けが良くないのだと理解してください。
金利を下げたければ、まずは、銀行からの信頼を上げて、自社の格付けを改善しなければなりません。

最後は、利益です。
銀行は、営利企業ですから、利益を求めます。
銀行は、赤字が続いて自己資本比率が一定の値を割り込むと、最悪の場合には、金融庁に業務停止を命令されてしまうので収益にとても執着します。
金利から、調達金利、経費、貸倒れを控除しても残りがプラスになり、適正利益が出るように金利は、設定されます。

以上が、短期金利の決まり方です。

長期金利は、時間の経過に応じて、金利が変動すること事態がリスクですので、通常は、短期金利よりも高く設定されます。
さらに、長期借入の金利は、将来の物価変動も考慮します。
例えば、将来、物価が上がると予想されれば短期金利も上昇すると予想されるので、長期金利は高めに設定されます。
物価が下がると予想されれば、逆に長期金利は、低めに設定されます。

中小企業が1%未満の金利でお金を借りるための対策

金利決定の要素で、会社側が改善できるのは、格付けだけです。
格付けとは、単純にいえば、銀行からの評価です。
あとの要素は会社からすると外部要因です。

格付けを改善する対策としては、次の方法があります。

  1. 業績を改善して、連続黒字を実現する。
  2. 財務リストラにより、財政状態を改善し、営業キャッシュフローを黒字にする。
  3. 経営計画書を銀行に提出して定性評価を改善する。

これらの対策を実施すれば、中小企業でも、1%未満の金利で借入をすることはできます。
従業員数人の会社でも本当にこの金利で借りています。
ただ、赤字になったら、ちょっと粉飾してごまかそうというような姿勢だと、これらの条件はクリアできません。
業績改善に真剣に取り組まないと実現はできません。
粉飾などの小手先の手法では、営業キャッシュフローは、改善しないので、すぐにばれてしまうのです。
会計データの表面的な操作で問題を解決するのではなく、本質的にビジネスを改善するのだという決意が大切です。そのためには、経営計画をつくって、ビジネスを本質的に変えていく必要があります。

そもそも、多くの中小企業が誤解していることがあります。
今の日本は、銀行からすると借り手がいないのです。
財務内容を適切に開示して、戦略をきちっと説明していたら、多少業績が落ち込んだからといって銀行が支援を打ち切ったり、金利を上げることはありません。
きちっと説明すれば、銀行は協力してくれます。
経営を改善する計画を本気でつくり、それを説明していれば、金利交渉は、確実に有利に働きます。

general

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